TOPICS [寄付金]

今回は寄付金を取上げてみたいと思います。 寄付金といえば、実務上、 寄付金か否かをめぐる問題は少なくなく、また、現に法人が経済的利益を供与する態様もさまざまであることから、判断も決して一様ではなく、 複雑なものになっているのが現状です。このため法人の経営に関わる方々にとっても寄付金の損金算入制度の正確な知識を身につけることが重要となってきています。


・寄付金とは

税務上の寄付金は、寄付金、拠出金、見舞金、その他いずれの名義をもってするかを問わず、会社が金銭その他の資産や経済的な利益の贈与や無償の供与をした場合における贈与を寄付金といいます。原則として、事業に関係のないものに対する任意の拠出であり、従って、「事業に関係のあるもの」、「任意でない」拠出はそれぞれ支出時の損金ないし交際費として取り扱われます。寄付金は、法人税法上では原則として、損金の額に算入されないが、例外として、国又は地方公共団体に対する寄付金等については損金算入を認めています。


・寄付金の損金不算入

法人税法では、法人が各事業年度において支出した寄付金の額について、その法人の各事業年度の所得の計算上、以下のように損金への不算入を規定しています。

@損金算入限度額 (※) を超える部分の金額

A国又は地方公共団体に対する寄付金の額

B大蔵大臣が指定した寄付金の額(いわゆる指定寄付金)

C特定公益増進法人に対する寄付金の額(日本育英会、日本赤十字社等)


(※)損金算入限度額の計算

・資本金等×(事業年度の月数/12)×2.5/1000=(ア)・所得金額×(2.5/100)=(イ)
〔(ア)+(イ)〕×1/2=損金算入限度額


・寄付金と他の費用の区分

(交際費等)

法人がその事業関係者に対する接待、慰安、贈答等の行為のために支出するものは、福利厚生費、広告宣伝費、 会議費及び取材費とされるものを除き、交際費とされます。また、事業に直接関係ないものに対して金銭、物品等の贈与をした場合に、 それが寄付金であるか交際費であるかは個々の実態により判定することになりますが、一応の目安として金銭による贈与は原則として寄付金とし、 社会事業団体、政治団体に対する拠出金あるいは神社の祭礼等の寄贈金のようなものは交際費には該当しません。

(子会社等の再建費用)

法人が子会社等に対する貸付金の利息を減免した場合、その減免額は子会社等に対する経済的な利益の供与として、 寄付金課税の対象となります。しかし、経営危機に陥っている子会社等の倒産を防止して、これを再建するため(親会社のブランド、信用保持を含む) に不可欠のものであれば寄付金とはならないという取扱いになっています。

(給与等)

法人が従業員に対して行う経済的な利益の供与は、それが明らかに株主等の地位に対して供与されたと認められるもの及び病気、 災害見舞慶弔金等(=福利厚生費a/c)と認められるものを除いて現物給与とされ源泉徴収の対象となります。

 

このように少し挙げただけでも寄付金か否かの判断はさまざまな分野にわたり、複雑になっています。

次にその判断材料としていくつかの具体的な事例を挙げてみました。


例1 <子会社の経費を親会社がかわって負担する>

当該法人は、本社事務所として賃貸ビルを使用していますが、事業部門の一部を分割し、 子会社の設立に伴い、賃貸ビルの一部を子会社に使用させることにしました。分割した事業部門が従前使用していた部分を引続き使用させるものです。 このことについてビル所有者の了解は得ていますが、賃貸契約書上は従前通り、 当該法人のみが賃借人となっています。引続き賃借料の全額を支払うこととし、子会社に負担は求めない予定です。税務上の問題は?

<答>支出する賃借料のうち子会社が負担すべきであると認められる部分は、子会社に対する寄付金とされます。
<解説>親会社、子会社が別人格であり、子会社がビルの一部を使用することについて、ビル所有者の了解を得ていることからすれば、実質的には子会社も賃借人です。そうすると、従前通り賃借人として賃借料の全額を支払うことは子会社が負担すべき賃借料を代わって負担することにより、子会社に無償で経済的利益を供与することにほかなりません。


例2<社長の出身校に対する寄付金>

当該法人は同族会社ですが、他県にある社長の出身校である 県立高校の後援会から体育館の新築資金の寄付を求められ、200万円寄付しました。寄付金の依頼書によると、この寄付金は後援会に対するものですが、 体育館は完成後直ちに県に寄贈されることになっているので、国等に対する寄付金として全額損金算入が認められるとのことでした。間違いないでしょうか。 なお、当社とその高校は社長の出身校という以外の関係はなく、その県とも取引関係はありません。

<答>社長に対して給与(役員賞与)を支給したものとして取り扱われます。
<解説>法人税法上、国又は地方公共団体に対する寄付金は、その寄付によって設けられた施設を寄付したものが専属的に利用できること、 その他特別の利益が寄付したものに及ぶ場合を除き、その全額が損金の額に算入されます。国立又は公立の学校等の施設の建設又は拡張等の目的を持って 設立された後援会等に対する寄付金であっても、その目的である施設が完成後遅滞なく国等に帰属することが明らかな場合は、その寄付金は国又は地方公共団体に対する寄付金として取り扱われます。

しかし、法人が支出した寄付金のうちその法人の役員等が個人として負担すべきであると認められるものは、その負担すべき者に対して法人が給与を支給したとして取り扱うこととされています。

 

以上、寄付金について述べてきましたが、勿論これですべてではありません。判断にお困りの際には、当事務所へお問い合わせ下さい。


所長のつぶやき

フランスで行われているサッカーのワールドカップもいよいよ大詰めを迎えており、華麗なる美技に眠い目をしょぼつかせながらも、酔いしれているサポーターも多いことでしょう。

残念ながら日本チームは1次リーグであえなく敗退しましたが、予想通りとはいえ、実力の差は如何ともしがたく、むしろ善戦したのではないでしょうか。

サッカーと企業経営を比較してみると意外と示唆に富んでいることがわかります。

  1. 役割分担

    サッカーは1チーム11人ですがFW(フォワード)、MF(ミッドフィルダー)、DF(ディフェンダー)の3つの部隊に分かれます。企業における営業部門がFWに、製造部門がMFに、管理部門がDFにと分類できなくもありません。

  2. これからの人的配置も陣形の転換をサッカーにならう必要があります。

    攻めに転じる時には、製造から営業に人員をシフトして、技術営業職を充実させる必要性があります。

  3. サポーターをいかに増やし自社製品の熱狂的ファンをしたてあげるかが監督たる社長の腕の見せどころです。さしずめ、税理士はコーチやトレーナーの役割を果たすことでしょう。

七夕も近いことですから、4年後には今の大不況をふっとばし、サッカーも経済も世界の強豪チームと互角にわたりあえることを期待するものです。

( 所長 橋本 )


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