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〜キャッシュフロー経営の重要性〜

 毎期利益を上げている企業が、手形を決済できずに倒産するということがあります。いわゆる黒字倒産です。損益計算書では、利益が出ていることを示していてもそれが現金預金として残っているかどうかまでは表示していません。損益計算書の利益と実際の資金には期間的なズレが生じます。このズレをきちんと把握していないと、「勘定合って銭足らず」の状態に時として陥り、最悪の場合「黒字倒産」のようなことも起こり得るわけです。そこで今回は、キャッシュフローについてとりあげてみます。

「キャッシュフロー」がなぜ重視されるのか?

従来、日本ではキャッシュフローはあまり問題視されませんでした。これは資金がショートしそうになると土地や株式の含み益を担保に銀行が貸してくれたからです。しかし現在は、そうとは限らなくなってきています。つまり借金に安易に頼る経営はできなくなってきているため、利益に加えて、キャッシュフローが重視されてきているのです。

「キャッシュフロー」とは?

キャッシュフローとは、文字通り現金預金(キャッシュ)の流れ(フロー)であり、事業活動をとおして、一定期間内に生み出す現金及び現金と同等のものの増減のことをいいます。つまりキャッシュの流れをきちんとつかんでそれが会社として効率的に使われ、どれだけキャッシュを有効に生み出すことができたかを分析して経営に活かそうというものです。キャッシュフローについては、右のような算式で計算されます。

まず、損益計算書の中で、非キャッシュ項目を調整します。これには「減価償却費」「貸倒引当金」「有価証券評価損」などがあります。 これらは、費用が計上されその分「純利益」が減少していますが、キャッシュアウトフローは生じていませんから、利益にこれらの金額をたすことによってキャッシュフローを計算します。

次に損益計算書での調整項目に加え「受取手形」「支払手形」「売掛金」「買掛金」といった手形・掛取引や「未収入金」「未払金」などの確定債務を調整しす。 例えば売上のうちいくらかが「売掛金」として期末に残っていたとすると、売上として収益として計上した額のうち「売掛金」として未回収になっている額を引いたものと前期の「売掛金」の回収分がキャッシュインフローになるからです。したがって、利益に「売掛金」の増減額を調整します。 上記の過程が企業の主要な営業活動によって生じたキャッシュの増減を見る区分であり、企業のキャッシュ獲得能力を示す最も重要な部分となるのです。

「投資活動によるキャッシュフロー」とは、設備投資や子会社株式の購入など投資に関するキャッシュの増減を見る区分です。 「財務活動によるキャッシュフロー」とは、借入金などの財務的な要因によるキャッシュを見る区分です。

営業活動によるキャッシュフローを増加させ、それにより投資活動を行い、足りなくなったり余ったら財務活動で補ったっり運用したりするという流れです。ここでは細かいフォームは省略しましたが、概略的にはこのような流れになります。

キャッシュフロー計算書の構造(間接法)

T営業活動によるキャッシュフロー

損益計算書の当期利益

損益計算書の調整項目

非キャッシュ項目(+)

貸借対照表の調整項目

売掛金の増加(−)

買掛金の増加(+)

営業活動によるキャッシュフロー

U投資活動によるキャッシュフロー

固定資産・有価証券等の購入による支払(−)

固定資産・有価証券等の売却による受取(+)

貸付による支出(−)

貸付による収入(+)

投資活動によるキャッシュフロー

V財務活動によるキャッシュフロー

借入による収入(+)

借入の返済による支払(−)

株式の発行による収入(+)

配当金の支払(−)

財務活動によるキャッシュフロー

キャッシュ(現金等)の増減額

(+)キャッシュ(現金等)の期首残高

キャッシュ(現金等)の期末残高

 キャッシュフローの着眼点

企業の主要な活動である営業活動で、設備投資等の投資活動も賄えるだけの充分な資金を獲得できれば、借入などの財務活動に頼らずに企業活動を継続していくことができます。

常に「営業活動によるキャッシュ・フロー」の最大化を図っていけば、無借金経営を実現することも可能になるはずです。 実際にはこうした資金状況を実現することは容易なことではありませんから、一般的に、キャッシュ・フロー計算書では、営業活動によるキャッシュ・フローのプラス分では足りない投資活動によるキャッシュ・フローのマイナス分を、如何に財務活動で補っているかといった実態をみていくことになります。

キャッシュ・フロー計算書により企業のキャッシュ・フローの構造を掴むことで、今後の投資計画や借入金の返済計画などはもちろん、企業にとって本来資金の主要な源泉である営業活動によるキャッシュ・フローをより大きくするための対応策の検討など、将来の情報をえるために重要な情報を得ることができます。 キャッシュ・フロー計算書は、今後の企業経営に欠かせない計算書類になるのではないでしょうか。

 

所長のつぶやき

本格的な梅雨の季節となりました。 昔はキライだったこの時期ですが、(今でも好きという程ではないのですが)雨にぬれた紫陽花や街の風景を見るにつけ、なぜとはなく妙に落ち着くのはトシなんでしょうか…・。 先月に満53才を迎え、税理士会の定期総会も無事終了しました。一区切ついた心境です。

一部大企業を中心に元気を盛り返している業種も見受けられますが、圧倒的な中小企業はこの一年間が生き残れる(勝ち進むといいたいところですが)かどうかの正念場のようです。

幸いにして関与先が倒産するといった最悪のケースはいまのところないものの、ギリギリのところで懸命の努力を払っている企業も1つ2つではないのも現実です。

廃業して遊休土地を駐車場にしたり、賃貸マンションや貸店舗に用途変更できる企業は恵まれているといえます。 早くに将来性を見据えて安定収益を得ている社長さん達も一抹のさびしさはあるものの余裕が感じられます。

一方、今元気なのはやはり情報通信関連の企業です。弊所の関与先には少ないもののその取引先を含めれば色々とユニークな事業展開をしている企業も少なくありません。機会があれば、その活動概要をレポートしていきたいと考えております。

ともあれ、自己を含めた自社並びに周辺を見まわし、子細に検討してみれば、変化の胎動や伸びる芽が見つかるはずです。カッと目を見開いて(刮目というようです)2000年の後半戦に臨みたいものです。

ちなみに、反省を含めて今一度次の言葉を日に一度は唱えてみませんか。 ハッとすることがあったら、それはそれで前進のキッカケをつかんだともいえます。

1.表面しか見なかった
2.目立つものに目をとられていた
3.近くへ行って見なかった
4.離れてみるということをしなかった
5.小さな部分を注意して見なかった
6.知っていると思って確かめて見なかった
7.不可能と思って見なかった
8.恥ずかしいから見なかった

(所長 橋本)

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