トピックス 〜商法改正〜

   注目の商法改正が国会を通り、6月29日、公布されました。施行日は、10月1日です。今度の改正で一番注目され、実務に影響を与える点は 会社が会社の資金で、自分の会社の株を取得出来るということです。

   これを、「金庫株の取得」といいます。いままでの商法では、会社が自社株を取得することは原則、禁止でした。改正商法では、その立場を180度変更し、自己株式の取得をその取得目的を限定せず、原則的に認めることとしました。

   これは、わが国商法の基本的原則の大転換というべきものなのです。

Q1   従来、自己株式の取得・保有が禁止されていた理由は、何ですか。

   自己株式の取得・保有は、実質的に資本の払い戻しであり、会社法の根本理念たる資本充実の原則に反し、会社財産を危うくすること、株価操作等がされやすいことなど一般的弊害を伴うという理由で厳しく規制されてきました。

   従って改正前の商法では、消却が目的であるとか、ストック・オプションに利用する目的など、一定の目的がある場合に限られていました。そして、取得した自己株式は、その目的にしたがって速やかな消却や処分が求められてきました。

Q2   今般、自己株式の取得・保有を認めることになった理由は、何ですか。

@  合併、会社分割等の企業再編に際して新株の発行に代えて、保有する自己株式を割り当てることが可能になり、新株発行に伴う配当負担の増加や既存株主の持株比率の希釈化を防ぎながら、機動的な組織再編ができるようになること。

A  株式の需給関係を調整し、また、持合株式の解消売りの受け皿として利用することにより、株式市場の安定に資すること。

B  大株主等が株式を放出するときに会社が自己株式を取得することを認めることにより、これらの株式が敵対的買収をしようとする者に取得されることを防止できること。

   上記のようなことから、経済構造改革を推進し、証券市場の活性化を図るため、予想される弊害に対応しながら、これを認めることとしたのです。

Q3   自己株式の取得の手続きについて説明して下さい。

   会社が、自己株式を買いうけるには、次のことについて、定時株主総会で承認を受けなければなりません。

1.決議後、最初に到来する定時総会の日までに、会社が買い受けることが出来る自己株式の種類、総数及び取得価額の総額。

2.会社が、ある特定の者から、自己株式を買い受けるときには、その者。特定の者からの取得の際には、特別決議が必要となります。

Q4   自己株式の処分の手続きについて説明して下さい。

   自己株式の処分は、取締役会の決議だけで行えます。

   非公開の会社においては、定款で、株式譲渡について取締役会の承認を要する旨の譲渡制限が付されることが多いのですが、このような会社が自己株式を処分する場合には、株主総会の特別決議で、譲渡の承認を得ることが必要とされます。

Q5  「会社」が所有する自己株式は、どのように表示されますか。

   これまでは、会社が所有している自己株式は貸借対照表の資産の部に計上しておりました。しかし改正後は、自己株式を取得することは実質的には会社財産の払い戻しと同じであるということから、資本の部に別途自己株式という部を設けて、マイナスするという形式で表示しなければなりません。

Q6   自己株式を売却した場合、税金等の問題はどうなりますか。

   自己株式の処分については、その際に生じる差額の会計処理、税務処理等につき、なお十分な検討が必要であることから、まだ最終的には明らかにされておりません。平成14年の税法改正を待つことになります。そんなこともあって、会社は原則として平成14年3月31日までの間、その保有する自己株式を処分することができません。

所長のつぶやき……

10月、秋本番のスタートです。

   秋分の日以降、さわやかな晴天が続き、思わず郊外へドライブに行きたくなります。現実は税務調査が入り、ただでさえ窮屈な日程のやりくりに追われ、貴重な3連休もお墓参り以外は仕事と相成りました。

   とはいえ、遠方の旧友から電話があり、それなりに苦労をしつつも何とか自分らしさを見失わないよう努力している雰囲気にお互いまだまだへこたれるわけにはいかんと感じたり、母校の70才を超える名誉教授にお会いして前述の商法改正の動向を拝聴していると、その若々しさに自分も将来かくありたいと変に勇気づけられ、忙しさのなかにもいくつかの新鮮な出会いがありました。

   今月は税理法改正に伴う税理士業界内部の諸規則の見直しが次から次へと予定され、会合が集中しそうです。もう1つ身体が欲しい心境です。

   話は変わりますが、9月11日に発生したアメリカの同時多発テロに関して皆さんはどんな感想や今後の予測をお持ちでしょうか。

   アメリカ経済の富と権力を象徴する、双子の世界貿易センタービルがまさに映画の1シーンそのものとなって世界中が注視するなか卑劣なテロによって崩れ去りました。驚き、怒り、悲しみ、理不尽さが一挙に吹き出し、いいようのない感情におそわれました。改めて、日本人を含む多数の犠牲者・御遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。

   この犯行はまだ決定的な証拠はでておりませんが、イスラム原理主義過激派のビンラディン氏を中心とする勢力が強行したものとアメリカ政府は断定し、着々とその報復措置としての軍事行動を強化しております。

   有史以来、本国を攻めこまれた経験のないアメリカとしては超大国の威信にかけても90年の湾岸戦争を上まわる戦争態勢を目ざす状況となっています。

   この流れに日本も巻きこまれ、自衛隊の本格的な出動も予想されますが、もう少し、冷静に理性的な対処がなされるよう望まざるを得ません。(決壊したダムの奔流を前にするが如く悲観的になっておりますが…)

(所長  橋本)

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