トピックス〜平成14年度税制改正速報〜

平成13年12月14日与党三党によって、企業グループの損益を合算して課税する「連結納税制度」を中心に平成14年度税制改正大綱が決定しましたので、今回はその中の一部を取り上げたいと思います。

株式譲渡損益の「申告不要制度」を創設

個人投資家が株式取引で得た利益にかかる株式譲渡益課税について、簡単に納税できる「申告不要制度」の導入が決まりました。

株式売却額の1.05%をみなし利益に対する課税として証券会社が税金を天引きする現行の源泉分離課税を廃止し、申告分離課税に一本化されるのに伴って平成15年1月から導入されます。

  1. 個人投資家は証券会社に専用の口座を開設(1証券会社1口座に限る)します。当該口座外に口座内の上場株式と同一銘柄の株式を有しているときでも、銘柄が異なるものとして総平均法により譲渡所得等の金額を計算することになります。
  2. 証券会社はこの口座を使った株取引の記録を管理し、株式譲渡益が出た場合は翌月十日までに所得税・住民税合わせて20%(現在は26%)の税金を源泉徴収して納付します。この場合において、その年分の株式等の譲渡に係る譲渡所得等につき確定申告をするときは、当該口座内の取引金額を除外して確定申告を行うことができます。
  3. 証券会社は、その口座内の年間譲渡損益その他一定の事項を記載した報告書を作成し、これを、翌年131日までに証券会社所在地の所轄税務署長に提出するとともに、投資家にも交付することになります。

通常の場合はこれで納税手続きが終了することになりますが、仮に年後半に株式譲渡損がでて、年前半に払いすぎた税金の還付を受ける場合には、投資家自身が改めて確定申告をすることにより清算します。

連結納税制度を14年4月から導入

連結納税制度は企業グループを一体とみなして法人税を課すものです。持ち株会社などを使った企業のグループ経営や事業再編を後押しするものです。

企業にとっては従来の単体課税との選択になります。連結納税の対象は親会社と全額出資の100%子会社に限定されます。

グループ内の黒字企業の利益から赤字企業の損失を相殺するので単体課税に比べ課税所得が小さくなることが多いようです。ただし、連結納税に伴う税収減の穴埋め策として以下のようなものが講じられます。

  1. 連結納税を選んだ企業グループの法人税率(30%)に2%の付加税を2年間上乗せ
  2. 子会社の連結前からの繰越欠損金の控除制限
  3. 退職給与引当金の段階的廃止

したがって赤字子会社の少ない優良企業グループが連結納税を選ぶとかえって税負担が増す恐れがあります。

 中小企業の交際非課税を軽減

資本金が1,000万円超5,000万円以下の企業は現在、年300万円までの交際費の8割が非課税になっていますが、この上限が400万円まで引き上げられます。資本金1,000万円以下の法人は年400万円の8割を非課税とする現行制度を維持しつつ、非課税枠が認められていない資本金5,000万超の法人は引続き全額が課税対象となります。

所長のつぶやき ……

新年明けましておめでとうございます。

“希望に満ちた一年”というキャッチフレーズをなんのためらいもなく使用するには少なからず勇気がいりますが、不安を払拭するためにもあえてこの一年間掲げたいと思います。為政者が“病は気の持ちよう”と強調するときには別の政策的意図(医療予算の削減!)にうさんくささを感じますが、友人や身内に対する励ましの言葉としては当を得ていると思います。

“念ずれば花開く”という言葉がありますが、心で念ずるだけでなく、そっと声にしてみましょう。そして(誰もいなければ)大きな声で2・3回自分はこうしたい、こうなりたいという決意を口にしてみませんか。意外とすがすがしい気分になるものです。 

但し、現実は一段と大企業中心の構造改革・リストラが進展し、金融機関による貸し渋り、貸し剥がしと相まって企業倒産、失業増大、消費不振という負の連鎖が勢いを増しデフレスパイラルが猛威をふるいかねません。

こんななか、昨年顧問先の忘年会に参加させていただいた折、カラオケ等で盛り上がって、最後になごやかな表彰式があった後、社長ではなく、役員でもない従業員が中締めのあいさつをしたのですが、その言葉がとても気に入りました。「今年もきびしかった。満足な結果がだせなかった。でも来年は自分の喰う飯は自分で稼ぐ」というのです。

スローガンではなく、来年の忘年会を残念会にしたくないという心情が伝わってきました。鍋料理もおいしかったのですが、この従業員(社長でないところがミソ)の言葉が妙に新鮮に感じ、印象深い忘年会となりました。

ともあれ、21世紀の2年目がスタートしました。私自身、確定申告を間近に控えておりますし、改正税理士法のもとでの会務もおそらく多忙をきわめますが、健康に一段と留意して、“希望に満ちた一年”にしたいと念願しております。ヒヒーン!

(所長 橋本)


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