橋本博孔税務会計事務所

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平成22年8月1日



 トピックス 〜年金型生命保険で「二重課税」とした最高裁判決について〜



 夫が死亡し妻が受け取った生命保険金の内、分割で受け取る年金部分には相続税だけでなく所得税も課す現行課税実務が適法かどうかが争われていた事件で、最高裁判所は7月6日「相続税の対象となった分に所得税を課すのは二重課税にあたる」との判決を言い渡しました。今回はこの件について紹介したいと思います。


尚、ご質問は弊事務所へお気軽にお寄せ下さい。




 
[1] 内 容 (従前の課税実務)

 

 夫が死亡し、生命保険金として4,000万円を一時金で、他に2,300万円を10年間に分割して受け取る権利を相続しました。


 その結果、相続税としては、一時金4,000万円(法定相続人1人当たり500万円の特別非課税枠はありますが)のほか,2,300万円も将来の年金受給権としたうえで、通達で現在価値とされているその6割(1,380万円)が課税対象となりました。


 その上で、毎年受け取る230万円の年金にも別の財産(雑所得)ととらえて所得税が課されました。

  

 (※)現行実務でも年金形式ではなく一時金に換算して受取る方式を選択するとこの部分も所得税の課税対象から外れることになっております。



[2] 判決の要旨

 

 「所得税法9条1項15号 相続により取得する財産には所得税を課さない」とした所得税法の規定について「同じ経済的価値に対する二重課税を排除する趣旨である」と解釈。


 相続税の対象となった年金受給権に対する所得税の課税を「二重課税」にあたると判断しました。




[3] 判決結果の今後の影響

 

 判決の確定により、とりあえず初年度の年金230万円に課された所得税は還付されることとなります。


 但し、最高裁判決は争点となった初年度の所得課税を取り消したのみで終わっており、2年度以降の運用益相当額に対する取扱いや5年を超える部分の救済方法については税務当局の責任と判断に委ねております。






所長のつぶやき・・・・・・


  暑中お見舞い申し上げます。


 地球温暖化が実感される今日この頃です。猛暑を超えて酷暑という表現が大げさではない日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。全国的に連日30度を上まわっているようですが、意外にも九州や沖縄の方面はそれほどでもなく多治見を始めとする東海地方が地形のせいか、熱帯夜の連続で熱中症にて死亡する人も増加中です。ご自愛下さい。


 かつては京都のような盆地地域が夏の蒸し暑さの定番でしたが、気候変動や都会の人工的な排出熱により、各地の気温変動が複雑化する一方です。いずれにしても水分(スポーツドリンクの方がお薦めのようです)を十分に補給し、加えて睡眠とともに食事バランスに気を遣って元気に乗り切っていただきたいものです。プールやジム等に積極的に出かけ「いい汗」をかくという前向きな対処策を講ずることが健康を保つ王道のように思われます。


 小生も早めの夏休みをいただき、先週末に屋久島へ行ってきました。あの縄文杉で有名な所です。もっとも、本格的なトレッキング(往復11時間コース)は準備不足と体力の不安があったため、見送りましたが。それでも、白谷雲水峡やヤクスギランドでの3時間コース等、それなりにハードなハイキングを楽しんできました。樹齢1000年を超える巨木やうっそうたる苔むした「もののけ姫の世界」を満喫することができました。


 山のガイドさんからは若いうちにチャレンジしましょうとエールを送られましたが、ジム通いに精を出して、何年か後に屋久島のシンボルである縄文杉を自分の目で確かめたいと心密かに誓って(?)帰宅の途についた次第です。こうして公表した以上は自らにプレッシャーを与えるべく、体力の維持・増進に新たなる目標ができたといえそうです。(小さな声で、ファイト!ガンバレ!


 さて、参議院選挙も大方の予想通り、誰も勝者のいない結果に終わりました。民主主義のもどかしさと言えばそれまでですが、政治の混迷ぶりが病み上がりの日本経済にマイナスであることは間違いなく、業種のバラつきがあるとはいえ、中小企業には依然として警戒警報が発令中のままです。


 数少ない、明るい話題が最近ありました。今月号のトピックスで取り上げた最高裁の判決です。課税庁側の現行税務上の取扱いに対して、一人の主婦が素朴な疑問を抱き、7年程前に自力で問題提起をした事案でした。一部新聞報道でも大々的に取り上げられましたから、ご存知の方も多いかと思います。最高裁での全員一致の結論であり、課税庁側も早速既存の救済規定は勿論のこと、それ以上に遡って是正する方向性を打ち出しております。この点、政権交代により民意に素早く反応する行政側の前向きな対応に対して、時代の変化を大きく感じている次第です。


 この事案は地裁で納税者が勝訴し、高裁で敗訴したのを受けての逆転に次ぐ逆転という、実にドラマチックな展開となりました。関係者各位にとっては長く苦しい道のりでしたが、「まだ最高裁がある!」という民主主義の未来を信じる、実にさわやかな言葉が生きていました。


 従来、ややもすると地裁や高裁で画期的な判決が出ても、最高裁が行政当局や立法府の裁量権に遠慮して、市民・納税者の心情を酌み取らないことの方が多く、悪い、否定的な意味での「まだ、最高裁がある」から油断できないと身構えていたものでした。


 これから、消費税の税率アップ、所得税や相続税に関する課税ベースの拡大、更には法人税の軽減等々、税制全般に亘る熱い議論が交わされることと思います。抜本的な税制改革の方向性について、各方面の利害は総論では一致するものの各論になると激しく対立するのが常です。何はともあれ、庶民の命と暮らしを守り、透明度の高い議論が繰り広げられることを期待する次第です。


(平成22年8月1日 所長 橋本)   





                                             


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